2003年3月26日発行
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ルーツミュージックスタディ/メール・マガジン 〈00号〉
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現在、4月よりのルーツミュージックスタディ受講生募集中!
ウェブもリニューアルで読み物充実中!
ルポライター、DJ、エディターが様々なコーナーを受け持つジャズの解放区!
ジャズが気になる人、注目です。
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はじめまして。
このメールマガジンは、ジャズギタリストの第一人者で、日本ジャズ界の重鎮沢田駿吾さんが主宰するルーツミュージックスタディという「ウェブ」で「学ぶ」ジャズピアノ教習ページをもっと、よく知ってもらおうという趣旨で発行されるものです。
ジャズって格好いいけど、敷居が高いかな?と思っているひとや、もっとジャズを知りたい人にお届けするフツーの音楽ファンへの「ジャズ雑誌」であるという側面もあるので、安心して購読していただければ、幸せです。
さて、僕はこのメルマガ編集人の岸川といいます。
フリーランスの編集者で映画も傍らで撮っている暇人です(笑)。
いままでに編集した本は「光と嘘、真実と影/市川崑監督作品を語る」(和田誠、森遊机著・河出書房新社)や「別冊文藝/鈴木清順」など映画の本が多い。もうすぐ出る本では、「映画評論の
時代」(佐藤忠男共編・カタログハウス刊)があります。
映画とジャズは縁深いもの。
そういうシンパシーからこのメルマガは始まりました。このメルマガでは、そういう「縁」を掘り起こしてみようかなとも考えています。
このメルマガでは以下の内容を予定しています。
・新進ルポライター山辺健史さんによる、「もしもボクにもピアノが弾けたなら」という体当たりで弾けない人間が如何にジャズを弾けるようになるかを追ったジャズ・ドキュメント。
・在英のDJ、エドワード・ジョンソンさんの「一億三千人のためのジャズ史講座」。まったく新しい視点のジャズの歴史を皆さんにお教えします。ちょっとした蘊蓄王になれるかも!
・そして、特別ゲストに僕がインタビューするウェブ版とは少し違う「いつも心にジャズがある/市井編」。(0回はお休み)
の三本柱です。これの他にもいろんなイベントを予定しています
のでお楽しみに!
配信は、原則として毎週金曜日になります。
本号が創刊0号のため、「これまでルーツと仕事をともにしてくれた人」、「ルーツ宛にメールをくれたひと」、若しくは編集人の友人たちなどなどに「勝手に」送らせていただきました。
だってメールマガジンとはいえ読者のいない雑誌は、あまりに寂しすぎるもん!
ご迷惑のようでしたら購読解除(登録解除)も、もちろん出来ます。
なんて言っても正直な気持ちを言えば、読者は増えていってほしい。
面白い、と思ってくだされれば幸甚、周りのひとにどんどん宣伝してやってください。ホントにお願いします。
それではまた来週。
編集人敬白
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メルマガ版「もしもボクにもピアノが弾けたならin裏日記」0001
ルポライター山辺健史
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2月25日
バイトの給料日だった。気分高揚。でも、10万以上、口座に入っているのは、この日だけ。なんとかならんか、この貧乏生活。親からの借金、足したら30万にものぼってると昨日言われた。今年は、バイト(中古映画グッズ店のレジ)もして、バシバシライター仕事も受け、縦横無尽にやっていくぞ、と密かに宣言!
でも、今日ぐらいはイイ気分に浸って、昼からちょっとビールでも、と思って
るところに担当編集者Kから電話有り。
「ジャズ学校の教則メール通信を見ながら、実際に君の特訓をルポをレポート
してくれぃ」
僕が以前買ったシンセサイザーで練習しろとのこと。
書くのは面白そうだが、不安も過ぎる。
あれは7年前の冬だった…。当時、ぼくはYMOが好きで、なんとか弾きたいな、それならまず、シンセだろう!と思い立ち、月賦で買い、即ヤマハの教室に通い出した。ただ、教えてくれるのは、指使いとアドリブのみ。全然上手くなった気しないし、音符も読めずに終った。
専門学校に入ったことも手伝って、そのままなんとなく、熱フェイドアウト。
学生時代ずっと音楽2だったし、カラオケヘタだし、向いてないんだよ、オンガク、やっぱ。
強引に自分で理由をつけて、いつの間にか、鍵盤の前に座らなくなり、教室も辞めてしまった…。
あの時買ったシンセは、部屋の壁に立てかけられ埃を被ってる。
一時は、バンドやりたいなー、なんてことも思ってたのにな…。
そんな僕にできるかな?やると答えたものもどうやるやら…。しかし、やってみたいという気もする。僕には、ひとつ憧れが有ったのだ。
よく、ホテルなどでロビーにピアノが置いてある。そこを偶然通りかかる僕。横には、なぜかドレス姿の美女。
何も言わず、すっとピアノの前に座る僕。ゆっくりとジャズスタンダードを弾き出すのだ。
すると、美女は目を閉じて、過去の恋を思い浮かべてるかのように、ゆっくりと、ゆっくりと踊り出す。そして、すっと一筋の涙!
そして、弾き終わり、僕は一言。
「Sumoke get in your eyesダネ。」
彼女は何も言わず、そっと僕の頬に接吻。そして、ニコッと笑うのだ。
そして、それを羨望の眼差しで遠巻きに見る人々。
憧れるなぁ、こういうの。
例が古くてスマンが、『101回目のプロポーズ』の竹内力はピアニストだったし、『ロングバケーション』の木村拓哉もそうだった。モテル!これは絶対に。ホテルで即興演奏できる日夢見て、今回は必ず弾けるようになってやると決意!
2月26日
バイトから帰ってテレビを点けると、やっていたのは「チューリップ 結成30周年コンサート」の模様。
言わずと知れた財津和夫の、あのバンドだ。
そこには40過ぎのオヤジ達が、うれしそうに曲を奏でる様子が映っていた。
「こんな風にテレビに撮られるとは、思いもしてなかったし、緊張している。」と財津さんは語り、「虹とスニーカーの頃」「青春の影」「サボテンの花」などヒット曲を熱唱。
チューリップの5人?はそれぞれなんの変哲もないオヤジなのに、生き生きとしていてとても楽しそうに見えた。
ギターを弾くオヤジ。ドラムを叩くオヤジ。ステージ上を走るオヤジ。ハモるオヤジ。そして、大声で歌いながら見ているお客さん。
音を奏でるというのは純粋に楽しい事なんだなぁ。そして、それを聴いてくれる人がいるというのも幸運。決して異常な盛りあがりも見せないが、それでいて、やさしい一体感に溢れ、ほっとする時間が流れていた様に思う。
僕も最終的には、誰かの前で弾けるようになりたい。なんとなくそんな事を考える。
2月27日
ルーツ音楽院に行って来た。僕が習う教則ページの発案者、沢田先生と会う。
ホームページ上に載せるインタビューに立ち会ったのだ。
スーツ姿で現れた先生からは、ジャズマンらしい色気が立ち上り、ハキハキとしながらも柔らかな口調。
「巷に流布する教則本で、途中で挫折した人の為にこのツールはあります。1000ページにもわたる包括的なこの教材は世界にも類を見ないものです。」
楽譜、練習曲など何十通りも入っているとのこと。この教材に対する自信が窺えた。
…ちょっとビビる。
まず、楽譜が読めない。ジャズのスタンダードも数曲しか知らない。
しかも、口ずさめるほども知らないのだ…。ましてや指使いもとうに忘れている…。
大丈夫か。そんな僕にできるのか?
沢田先生の説明を聞けば聞くほど、不安になる。
しかし、行き詰まったら、個別の質問にも答えてくれると沢田先生。
分からなくなったらどんどん聞くことにしよう。
一抹の不安とほんの少しの希望を胸に、音楽院を後にした。
家に帰ると立てかけられたキーボードが、弾かれるのを今や遅しと淋しげに佇んでいた。
3月4日
昼頃起床。暇な一日を持て余し、家の近所の浅草演芸ホールで一日を過ごす。
昼の部、夜の部と入れ替え無しで延々いることもでき、2500円。途中で出ようかなと思いつつも、16時から最後21時まで居てしまった。
落語好きの自分には居心地が良い。良く工夫がなされていて、落語の合間にちょうどよいバランスで“いろもの”が入る。缶ビール一缶買い、贅沢な時を過ごせた。
少し高いかなと思いつつも、好きなものには金を注ぎ込もうと思い直す。
また、来ようと決意。
ジャズも習うことだし、目指せ!趣味人!
埃かぶったシンセを引きずり出し、設置する。
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一億三千万人のためのジャズ史講座 0001
(ウェブ版が最新ですから、これは復習編ということです)
【歴史を忘れてみましょう】
エドワード・ジョンソン(DJ)
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依頼を受けて困ったなと僕は思った。僕みたいな人間が、教えられるだろうかというのが不安の大きなひとつだから。
僕はパブリックスクールの頃から落第生だったわけなのに、どういうわけだか「イエス」と答えてしまい、PCの前でふんづまりながら七転八倒せにゃならなくなったわけ。
僕の悩みを解消するためには、教えるということは考えないでひとまず、一緒にお喋りするというようなノリで書いていこうかな、とひとまず僕は思って安心する。
さてと、いちおう僕の方は心の準備は出来たわけだ。あとは皆さん、の心構えです。
「このガイジンでいいのか?この得体の知れない、日本語が変に流暢なヤツで自分は
ジャズについて蘊蓄を他の人にエラソーに語れるようになるのか?」
う〜ん、それは僕には確実には言えないけれど、少しは、ちょっぴりだけど、蘊蓄は語れると思うよ。この言葉を信じたら、少しだけお付き合い下さい。
まず、編集のKさんには悪いけど、クボタジロウについて語ろうと思ってたことを今回は辞めます。「ゲッ」と叫ぶのが遙か日本から僕には聞こえますね。
いいんです。そういうのがジャズですよ、Kさん。初めてにしていきなり久保田さんはないでしょう。追々この人には触れます。皆さんも憶えておいてくださいね、僕はものすごく気侭で物忘れが激しいので。
さてさて脱線が多すぎますね、僕の話は。こういうのがジャズでは1940年代中盤から後半にかけて出てきた「インプロヴィゼイション」という概念です。つまりアドリヴですね。概念を忘れて考えると、こういう行為は僕らの間では日常茶飯でしょう?
いつもお喋りしているときに、しゃちこばって、次に話すことを考えていますか?もし考えているなら、あなたはスクウェアな人です。まじめなんですね、たまには肩の力を抜いてお喋りしましょう。
どこへ行くのか分からない会話は、行き当たりバッタリの旅に似てじつに楽しいものですから。
さてさて、本題です。
まずは、歴史を忘れてみましょう、ということ。
ジャズに限らず、ナントカ史っていうのはいろんなジャンルにたくさんあります。
映画も絵画も、戦争も。そういうありとあらゆる事物には歴史があります。そういう認識を欠いた発言をやると、スクウェアな人は「歴史認識がない」と発言します。
たしかにモノを知らない人というのは、歳を経て話すと辛い。疲れてしまう。けれど、音楽などのことに関して言えば、歴史は権威にすり替わって、なんだか近寄りがたいモノになってしまう。これは、頑固そうなお爺さんやお婆さんに話しかけるのが、容易ではないのと同じですね。
だからこの際、ジャズに関してはせめてそういうことは問わないようにしましょう。
歴史なんて、いまのメガCDストアではなんの役も立たないくらい混沌に埋没しちゃってる。ディジー・ガレスピーと渡辺貞夫がでかい店内で「こんにちは」してるし、ナット・キング・コールとシナトラが肩を並べてナタリー・コールに手を振ってるよ。そんな世界で歴史はもはや役に立たない。かつてあったとさという昔話の世界でしかない。そういう認識でジャズ世界に入っていきましょう。
ジャズって言うのは、寄り道といいかげんを熱心にやる行為です。歴史を踏破する際も、寄り道といいかげんを熱心に行おう、と僕は思います。
ジャズの語り口を日本語表現にまで広げた面白いおじさんに植草甚一さんがいます。
植草さんという人は、とにかく面白がりやで、いわゆる知的ハンティングの達人です。
僕はこの人の文章を日本に来て知り、いわゆる「はまって」しまいました。ウラジミール・ナボコフからポルノグラフィまで、なんでもかんでも面白がって、チクッと刺した批評を与えるのです。物知り顔のスクウェアなスノッブとは大違い。スクウェアって何度も言ってますけど、僕はそれはそれで嫌いではないんですよ。いわゆるスタンダードな人で四角張って真面目なモノは、意外とチャーミングなんです。Kさんがよく言う突っ込み甲斐があるというか、そういう可愛いモノとして僕はスクウェアという言葉をひとに対して使います。
また外れてしまいましたけれど、植草さんはひと味違うひとなんです。
ずーっと続いていくような独特の晩年に展開した文体は、ほぼフリージャズ。しかも時代配列などあとで良いとでも言いたげな、時代の跳梁ぶりはイングランドでもいないんじゃないかなと思います。歴史認識の羽目外しは、知識が豊富だってこともあるけれど、ジャズの敷居を悠々と踏み越えていくためには、野蛮な勇気も必要でしょ。
歴史の体系づけと乱稚気パーティを交互に一緒にやっていけば怖くはないよ。
さあ「はじめに」はここまでにして、次回から「スクウェアな音を聴いたひと」というタイトルでジャズの歩みを自由に僕らみんなで遊んでいこう。
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【発行】 株式会社 ルーツミュージックスタディ
【編集】 岸川 真
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